「あ、さん、こんにちわー!」



振り返った先に、仲良しトリオがいた。

に元気良く手を振って声を掛けたのはカイ。

その横にいたフッチが軽く会釈をする。

もう一人はサスケ。


「カイくん、こんちわ。 フッチくんとサスケくんもー」

笑顔でもカイに手を振り返す。

「何してたんですか?」

そばに近づいてきたカイたちに、にこっとしてから、まっすぐ腕を伸ばし、指を立てた。

その先には満開に咲いた桜の花の並木が続いている。

「あんまりきれいだから、一人花見してたの」

「そうだったんですか。 うん、でも、本当にキレイだもん。 見なきゃもったいないですよね」

とカイがほわわんと桜の木を見上げる。

「カイくんたちは宴会ってしないの?」

「宴会ですか?」

「うん、花見の宴会」

カイとフッチが顔を見合わせた。

サスケの方は、なに言ってんだ、こいつ、と、いうな目でを見ている。

「そうか、しないのか……ふむ」

は一人で納得してうなずいた。



「おれ、そろそろ戻るな」

そんなを無視する形でサスケがカイとフッチに告げる。

「そうなの?」

「カイさんも、そろそろ戻らないと呼びにくると思いますよ」

「あ……うん、ぼくも部屋にもどらなきゃ」

どうやら仕事の合間の息抜きで遊んでたらしい。


さん、またいっしょに遊んでくださいね」

「それじゃあ」


「うん、カイくん。 フッチくん、またね」

そう挨拶すると、先に歩き出したサスケの後ろについて歩き出す。


「………………」

「♪」


「付いてくんなよ……」

「へ? ううん、私もこっちなの」

サスケにとって、はどちらかと言うと苦手な人種の部類だ。

一言でいうと、油断ならない。 もしくは掴めない。

ふわふわとしているようで、時折、鋭いことを言ったり、

なにも見ていないようで、いろいろ見ていたり、

なぜか忍術のことに詳しかったり、かと思えば、当たり前のことを知らなかったり。

なにより、時折、ケイと一緒になっていたずらをしかけてきたり。
(その部分が一番、苦手なのかもしれない)

今も、ぼーっとしてるが、なにを考えてるのか全くわからない。

「……そういえばね」

今まで鼻歌を唄っていたのが、ふいに声をかけられて、サスケはどきっとした。


ほら、やっぱり……

なにを考えているのかわからない。


「そういえばね、サスケくんとこんなふうにふたりっきりって初めてじゃない?」

顔を覗き込むようにして、にっこり笑い掛けてくる。


サスケの顔が少し赤くなった。 

それを意識ししてかせずか……ふいっと、横を向く。

「いちいち覚えてねーよ」

ぶっきらぼうに答える。

別にそういうつもりはないのに。


「そうだよう。 だって、ほら。 サスケくん忙しいし?」

「……あんただって、一カ所にいないんじゃないか」

そうなのである。

彼女は気がつけば居たり居なかったり。

食堂でバイトはしているようだが、それも不定期だ。

実際、朝の鍛錬の前に姿を見かけたり、カスミと話したりしているのを見るぐらい。

後はカイと一緒に遊んでいる時に声をかけられたりする程度。

いつのまにか現れていつのまにか消えている。

「そうかなぁ? 私、いる場所限られてるよ」

あはは、と、大口をあけて笑う。


……やっぱりなにも考えていないのかもしれない。


反らしていた視線を彼女に向けると、彼女は実に楽しそうに歩いている。

返事をしないでいると、独り言なのか、問いてきたのかわからないような声で呟いた。


「やっぱり桜はどこの国でもきれいだねぇ」


やっぱり、答えずに、の見上げる桜に視線を向ける。

幾枚も重なった、薄いピンクの花が目に入る。


そう確か前にカスミから聞いたことがある……

「…………」

「え?」

がきょとんとした顔でサスケを見てきた。

「それ、って言うんだってさ。 前にカスミさんから、聞いた事ある」


目をぱちくりさせて、サスケを見て、頭上に咲き誇る花を見て……

そして頬を真っ赤に高揚させる。

「それって……それって!!」


宝物でも見つけたような勢いで、いきなり、サスケの顔面に顔を合わせてきた。

思わずぎょっとして、身を引く。

「私とおんなじ名前なんだ!? すごい! すごいね!!」

なにがすごいのかよくわからないが、本人は本気で感動しているようだ。


「ありがとう!! そっか、この桜、ってうんだぁ」

「何が『有難う』なんだよ……」

「教えてくれたもん。 えへへ、ありがとう!!」

今度は照れくさそうにいうと、さっきまでとは違うまなざしで、自分と同じ名前の桜の花を見上げる。


風が吹いた。

柔らかそうな少し長い髪がふわり揺れる。


なんと言っていいかわからず、それを見ていた。


その花は 案外、彼女に似ているのかもしれない。


白でも桃色でもなく、淡い空に透けるよな薄い花びらと、

賑やかに重なっていながら、一つ一つはどこかほわんとして……。



こんな些細なことで大喜びして……案外子供なんだな……


そんなことを思うと、可笑しくなってきた。

「おーい。 ぼーっと突っ立てると、置いてくぜ」

先に歩き出すと、は慌てたように追いかけてくる。

「やだ 待ってよう」


別に一緒に戻ろうと言ったわけでもないのに


でも

たまにはこんな日があってもいいではないか。






「なるほど。 うん、いいかもしれない」

どういう意味では呟いたかわからないの言葉は

先を歩くサスケには届いていなかった。