とんとん


はその扉を叩く。


いるかいないかは運しだい……


「ルック?」


名前を呼んでみると愛想のない返事が返ってきた。

「……誰?」

ー。 起きてる?」

「何か用?」

「うん、用」

扉の向こうでルックが溜息をついたことなど知るよしもないは、


その扉が開いた途端、目を輝かせた。


「メリークリスマス! ルック♪」

「は?」

そしていきなりルックに白いリボンのかけられた包みをずいっと差し出す。

「クリスマスプレゼント。 お祭の時、全然、見かけなかったし……」


は差し出したその状態のまま、少し躊躇いがちに聞いた。

「……ずっと部屋に居たのん?」

「星見に、外には出たけどね」

ルックが視線を外し、下を向く。 そして溜息を一つ。

「人の多い所は、嫌いなんだ」

「そっかぁ。 今日は人いっぱいだったもんね」



ルックらしいな、と、は思った。 実際、今日はいつもに増して人が密集していたわけで……

それよりも、はルックの言った星見に……に反応していた。


「外、星も見えた? 雪、降ってきて綺麗だったけど……」

「見えるよ、その辺で見てた訳じゃないからね。雪……は、そういえば降ってたっけ」

まるで雪が降っていたことに気付いてなかった様な口調だった。

「へぇー! そうなんだ! 私もよーく見れば良かった。 うん、降ってたの」

笑っているが、その辺で見てたわけじゃない、の意味はよくわかってない。

純粋に星が見えていたのだということにわくわくしているのだ。


「ふーん……」

ルックの目に差し出されたままのプレゼントが映った。

盛大に溜息つき……引ったくるように、の手のなかのそれを取る。

「これで良いんだろう」

少し……むすっとしたふうにも見える。

照れ混じりなのだろうが、普通、絶対そんな風には見えない。

ただ、少し……は苦笑しつつも、嬉しかった。

そう、セイにプレゼントを渡したときとは異なる嬉しさだ。

受け取ってもらえるのか、少し不安だったから。



喜んでもらえるかどうかはもちろんわからない

だが、にとって、ルックの場合、こういうイベント自体に興味を持っていると


思っていなかったから……

「変なものは入ってないから! 安心してください」

笑って、冗談めかしてみる。

「そう」

淡々と言葉を返すが、手にしたプレゼントにチラリとちらりと視線は移した。


の瞳がさらに輝く

「えっとね、クッキーなの。 ……食べれる?」

「食べる事が出来る物なら、ね」

「できるよ」

弾けるようにが笑った。

「あんまり甘くしてないよー。……形の悪いのは目を瞑ってね……」

最後の部分だけ、やや視線を逸らす。 よほど形の方は出来が悪いらいい。

「それなら、食べられるんじゃないの」


他人事のように言うルックに、またが笑った。

そして思い出したように、人差し指を立てて、袋を差す。

「あとね、コインはこっちのお金じゃないからねー。 使えないやつだけど。 プレゼントしたかったの」


「……コイン?」

「うん、コイン。 おばあちゃんが言ってた、外国のコインはお守りになる、って。でもそれだけでもなくって、浮き彫りがきれいなの」

「……ふーん……」

ルックはじっとプレゼントを眺めた。

は黙ったままそれを見続けるルックの様子に少しわくわくとしていた。


気にいってくれたかな?



受け取ってれくただけでなくて、気にいってもらえたなら大成功だ。

嬉しくて、また踊り出しそうになる気持ちを抑えて、一歩後ろに下がった。

そんな事をしたら、絶対冷めた目で見られる、ということぐらいは想像できる。

「じゃあ……お休み前に立ち話してごめんね?」

そういうと、ルックは視線をに戻した。

「別に……子どもでもないし」

「あれ? ルック、夜更かしさん?」

揶揄うように言ってみる。

「子どもみたいに早く寝ないってだけ。 遅くまで起きてたら脳細胞が死んでもっとバカになるから、君は早く寝た方が良いんじゃないの」

「ひでぇ!」

少し鼻で笑うように言われてしまった。

一つ言うと倍返しなのだ。

でもは思わず笑ってしまう。

「うん、本当はねぇ、もうちょっとお話もしたいんだけど、実際少し眠いの。 ……だからもったいないけど、今日は寝るね」

「……早く戻って寝なよ。 ここで寝られても困るし」

「寝ないよ、凍死したくないもん。 じゃあおやすみなさい☆」

手を振るとルックが



「……おやすみ」

そう言った。



の表情がふわっと変わる。 そしてくすくすっと笑った。


おやすみ……なんて返してくれるなんて思わなかったから……


もう一度手を振ると、眠気を堪えてよろよろと歩き出す。



☆部屋に戻って寝るとしましょうか







ルックはよろよろ立ち去るの後ろ姿を暫く見ていた。

そしてはたと

……そんなに遠いところに行くわけでもないのに何見てんだ……

そのままルックは部屋に扉を閉めて部屋に引っ込む。


廊下には静けさが戻っていた。


雪の降る音がまるで聴こえるような静けさだった。