あ、あれに見えるはカミューさんとマイクロトフさんではないか!


でもなんであんな端っこにいるんだろうー


私はたったかと走り出すと、二人に近づいた。

人気の高い二人は時折、女性達から声を掛けられたりしているようだ。

木陰から、明らかに違うお嬢様方が二人を見て、きゃっきゃと言っている。



気持ちはわからなくもないけどさ……

カミューさんはともかくマイクロトフさんはぜってぇ気が付いてないね!

賭けてもいいよ ( 賭けにならないだろうけど☆ )


「カミューさんー! マイクロトフさんー!」

私は元気よくお二人の名前を呼んだ。

「これは……テマリさん」

「今晩和」

マイクロトフがぺこりと一礼して、、カミューも一礼を返してくれる。

「こんばんわ」


挨拶は基本。 さすがは騎士だよね


私ももぺこりとおじきをした。


「ご機嫌よう、テマリさん。 その衣装、とてもよくお似合いですよ」

ぐは!!

さすがはカミューさん……初っぱなからそのお言葉は……


笑顔でカミューさんに言われて私はえへへっと、照れ隠しに笑ってみた。

彼にそう言われて微笑みを向けられて照れない女性がいるなら見てみたいものですよ

最近はようやく慣れてきたってカンジ?

それでもまだ時々、彼らのフェミニストっぷりに悶絶したりはする……

修行が足りないなぁ……


「ありがとうございます。 あ、見てましたよー、お二人ともさすがにもてますねぇ」

とりあえず、話題を変えよう。 服を誉めて貰ったりするのは嬉しいけど、限界を超えるとやばい。(何がかはないしょ☆)

「い、いえ、そんな……」

マイクロトフさんが微妙に赤くなりつつ、動揺する。

「そんな照れなくってもー」

えへへ、自分が照れるのは照れくさいが相手を照れさせるのは楽しいなぁ♪ 

実のところ、二人に接近した辺りから少し背中に刺さる視線が痛いのですがね


「でもどうしてこんな端っこにいるんですか?」

「あ、はい。 俺達は、この『クリスマス』と云う祭りは初めてで……」

「この場所からでも、充分楽しめますしね」

「そうなんですか……でも……」

それ以上はどういうふうに言っていいかわからず、私は視線を泳がせた。

「何か、気になる事でも?」

マイクロトフさんが私の様子を見て問いかけてきた。


泳いだ先には、例の彼女達だ。

カミューさんも同じ様に私を見たけど、わかったのだろう

苦笑してるし


「いやいや、これはこれで面白いと思うのでなんでもないです」
 
「は?」

私のフォローにならないフォローはよけいにマイクロトフさんを混乱させただけのようだった。


やっぱり……まったく全然これっぽっちも気づいてないよ! この人!!


これ以上、この話題引っ張ると可哀相だな……


「いやいや、いいのですよ。 あ、そうだ。カミューさん達はプレゼント貰いましたか?」

話題を変えるように言ってみた。

どのみち、私もプレゼント渡したかったしね


「プレゼント?」

「あれは子ども達の貰うものなのでは?」

カミューさんとマイクロトフさんが綺麗に分けて言った。


なんでこんなに気が合うんだろうな、この二人は(爆)

ま、だからこそなんだろうけどね


「あ、でもでも。 せっかくだし」

リュックを開けて赤と青のリボンでそれぞれ結ばれた小さな包みを二つ出す。

お二人の色のリボンで決めてみました!気が付いてくれるかな?


……カミューさんは気が付いてくれそうだけど……マイクロトフさんは無理だろうなぁ……


まぁいいや

「クリスマスはね、『愛が降る日』なんですよ♪」

私がそういうと二人は明らかに困惑した様子だった。

まぁカミューさんはおくびにも出さずに

「それは……素敵な、言葉ですね」

って返してくれたけど、マイクロトフは少し驚いた顔で私を見てる。


……私そんな変なこと言ったかなぁ?


そんな二人ににこっと笑い、手に持った包みを差し出した。

「はい。 だからお二人にもクリスマスプレゼントです」

「あ、有難う御座居ます!」

マイクロトフさんがどっか緊張した感じで受け取ると

カミューさんはにこやかに受け取ってくれた。


こういうとこは対照的だ……ほんとに面白いなぁ


「有難う御座居ます、テマリさん。 ですが、すみません。今、お返し出来るものが何も無くて……」

カミューさんが少し苦笑いで言葉を締めた。

しまった! 気を使わせてしまったか!?(汗)

「お、俺も何も……も、申し訳ありません!」

マイクロトフさんなんて、慌てて思いっきり頭下げたりしだすし!

「わ、頭上げてください、マイクロトフさんっ」

こっちが慌てるですよ!? 

カミューさんのは礼儀としての言葉としても……


絶対、この人マジ謝りだって!(汗汗)


「お返しなんて気にしないでくださいね、本当に気持ちのプレゼントですから」

「で、ですが……」

まだ何か言いたげなマイクロトフさんを制止して、カミューさんががにこりと笑顔を浮かべた。

「有難う御座居ます、テマリさん。 でしたら、私達も気持ちで返させて頂きますね」


……あんた、やっぱりやり手だよ!!(涙)


私はほっとしたのと同時に可笑しくなってきてしまった

くすくす笑って

「はい、わかりました」

返事した。


お返しを貰おうとか思ってプレゼント用意してるわけじゃないけど

律儀なお二人の姿がたまらなく嬉しかったわけですよ

……私の周りに( いや現代の世界のことだけど )こんな人たち、いないもんなぁ


「あ、あんまり甘くしてないからたぶんお二人とも食べれると思います」

「それは……これは、テマリさんが作られたのですか?」

カミューさんが言った。 さすがに敏感な方である。

「はい。故に形は変です」

「そんな、お気持ちだけでも充分有難いです!!」

私が笑うとマイクロトフさんは力一杯言ってくれた。

「あはは、ありがとうです」


ほんと、この人可愛いなぁ………………


その時、白いものが目に入った。 


あれ?っと見上げると

「うあ……雪!!雪だぁ!!」

そう、雪!! 雪が降ってきたのだ!

「道理で寒いと……」

少し空を見上げてカミューさんが自分の両腕を摩った。

「お前は相変わらず、寒さに弱いな」

マイクロトフさんの言葉に、ん?っと思って、思わず聞いてみた。

「カミューさん、寒いの苦手なの?」

「そうなんですよ」

マイクロトフさんを一瞥してから苦笑いしたカミューさんが

「えぇ……生まれた所が、寒さとは無縁な場所だったので」


そう言った。

そういやロックアックスの生まれじゃないんだっけか、カミューさん

「ありゃ、そうだったんですかー」

「鍛錬が足りんのだ」

マイクロトフさんが軽く説教するみたいに言うと、カミューさんは肩竦めた。

「お前を基準にされたら、誰でも足りないだろうさ」


違いない!!(爆)


「マイクロトフさんって心頭滅却すれば火もまたすずし?」

私が笑いを堪えてそう言うと、彼はまた力を込めて返してくれたし

「テマリ殿、良い事を仰る!」

嬉しそうに頷いたマイクロトフさんてば、、カミューさんの方を見て

「カミュー! 聞いたか、心頭滅却すれば火もまた涼し。お前も、心頭を滅却して鍛錬を積めば、すぐに寒さにも慣れる!!」

と力説したりしてる。

カミューさんは溜息ついてから私を見て言った。

「テマリさん、マイクロトフにその様な事を言ってはいけませんよ。 調子に乗ります」

困った顔を作ってるけど、でも可笑しそう。 よくあるんだろうなぁ、こんなこと。

「あははは、すいません」

私は悪びれなく謝った。


「カミューさん、寒いの苦手だったら風邪引かないでくださいねー? 雪の日は冷えますよう」

これは本気で心配してだし。

だって私なんて昔は、雪と戯れた次の日は大抵熱出してたし

いや、カミューさんが雪と戯れると思ってはいないけどさ

「テマリさんも、お気をつけ下さい。レディーは、身体を冷やしてはいけませんからね」

にこやかに返してくれたカミューさん……

絶対、微妙にさっきの『調子にのる』発言に引っ掛かってるっぽい顔してるマイクロトフさんに気が付いてるはずなのに……。

軽く無視ってますか、扱いに慣れていらっしゃるのですね(何)

私はむしろカミューさんのレディー発言でまた頭がいっぱいです。


駄目です、カミューさん、その言葉は……どうしても頭の中でぐるぐるしてしまいますよ!


「そ、そんな。 でも、私寒いのも雪も全然へいきだし、風の子だし!」

ぐるぐるがばれないように一生懸命言ってみる……


無駄な抵抗だが


「テマリ殿は寒さに強いんですね。見習えカミュー」

さっきの仕返しですか? マイクロトフさん……


「そうだな。雪を楽しめる程度には」

カミューさんの方が一枚上だったようです……


「良かった。 雪は嫌いじゃないんですねー」

「えぇ。 嫌いでは、ありませんよ。 テマリさんは、お好きですか?」

「え? あ、はい」

私は大きく頷いた。

「雪、大好きです。 暖かいし、冷たいし、気持ちいいし、遊べるし」

「成る程。 テマリさんらしい」

そんな微笑まし気に笑われるとまた貧血起こしてしまいそうですよ、カミューさん

「えへ。 それにね、私たちのせ……えっと……国ではクリスマスの日に雪が降るとホワイトクリスマスと言って、とても嬉しい事なのですよ。 ロマンティックナイトなのですよ」

とりあえず世界、といつもの調子で言いかけて、慌てて直した。

一応、ここは外だしね

「ロマ……ナイ……?」

マイクロトフさんってば完全に面食らってしまったようですよ

「はい、恋人達の熱い甘い夜になるのです」

「恋……」

「あ、もちろん、そうでない人たちにも素敵な夜ですが」

なんでか妙な顔です、面白いです、マイクロトフさん!

カミューさんはちらりとマイクロトフさんを見てから、

私に視線移して少し肩を竦めて苦笑いしてみせる。

私は可笑しくてくすっと笑ってしまった。

ちょっと体がぶるっと震える。


あれ? 寒いのかな?

自分では意識してなかったんだけど、カミューさんがいち早く気が付いたみたい

「少しお待ちを」

そういうと、その場を離れて一番近いテーブルに行ってしまった。

それを見たマイクロトフさんが、いきなり自分の上着を脱ぎだした


はい?!


「気付かずに申し訳ありません。どうぞ、身体を冷やされないよう…」

差し出されて、私は考える間もなくパニックに陥る

「そ、そんな!マイクロトフさんが今度寒くなりますよう!」

「先程仰ったじゃないですか。 心頭滅却すれば火もまた涼し、俺は大丈夫です。 それに、日頃から鍛えていますからね」

笑顔のままで私の後ろに回ると肩から上着をかけてくれた。

「あう。 ありがとうです、マイクロトフさん……」

こんな……



こんなことされたことないよ!! ママン!!!(涙)


いや……冗談抜きにして……


その……嬉しいですよ……

なんだか、じわって目頭が熱くなるのを感じた



片手に紅茶のカップを持ったカミューさんが戻ってきて

マイクロトフさんの上着が私の肩にあるのを見ると少し笑う。

「成る程。 雪が降る筈だ」

マイクロトフさんはちょっとむっとした顔。

声を出さず笑った私にカミューさんがカップを差し出してきた。

「ミルクティですけど、宜しければどうぞ」

しかも笑顔で!

「わぁ、ありがとうございます、頂きます!」

私も笑顔で返す。


カップからほわんとした暖かさが伝わってきた……

ふと見ると、お二人とも嬉しそうに笑ってる……


感謝を忘れずに、私はミルクティを口にした。

「あったかい……」

「それは良かった」

カミューさんが言った。

ほわほわっとして、私は空を見上げる。



黒い空から白い雪があふれ出してる……


私の大好きな光景



「どうかしましたか?」

マイクロトフさんに聞かれてしまった。 よっぽどぼーっとしてたらしい

「あ……。あや、なんでもないです、ごめんなさい。 ぼーっとしてました」

カミューさんとマイクロトフさんが、少しだけ顔を見合わせた。



……なんだか、心が暖かくなっちゃって溶けたみたいになって

私はついつい口をついて話してしまう……


「……黒い空から白い雪が降ってくると吸い込まれ……というか飲み込まれて行きそうで……そんで体がふわってなるんですよ。 不思議ですね」

人に言うと変に思われるから、あんまり言わないようにしてるんだけど、この時ばかりはなんか……思わず……


「飲み込まれたらどうなるのかな、とか考えたりもしちゃいます。 それはそれで楽しいかも、とか」


空から視線をお二人に変えて、微笑んで見せると

マイクロトフさんは少し分らなさそうな顔して空を見上げ、

カミューは空に一度視線をやってから私に視線を戻すと

「楽しい……ですか」

そう言って微笑んでくれた。

「はい……!」

嬉しい


嬉しいな


マイクロトフさんは、私が言った言葉の意味を考えてくれてる……


カミューさんは私の言葉を聞いて、微笑んでくれた……



なんでこの人達こんなにいい男なんだろうなぁ……

ううん、なにより、なんでこんなにあったかいんだろうな。




少し泣いてしまいそうになって、私はお二人に言った。

「っと……私、そろそろセイくんのところに戻りますですよ。 他の女性の視線が痛い」

冗談混じりに言うとカミューさんは苦笑い

マイクロトフさんは、やっぱりイマイチよく分ってない様子で

「そうですか?」

と答えた。


やっぱり面白いですよ、マイクロトフさん……(笑)


「はい。 それにセイくんも心配してるかもですし」

カップをテーブルに置いて上着を脱いで、マイクロトフさんに差し出す。


「ありがとうございました。 マイクロトフさん、これ、すっごくあったかかったです。 カミューさん、ミルクティも最高に美味しかったです」

「喜んで頂けて良かった。 それでは、セイ殿にも宜しくとお伝え下さい」

「まだ寒いですから、どうぞ。着ていて下さい」

私は小さく首を振った。


「もう充分です。心まであったかくなりましたから」


一瞬きょとんとした後に顔赤くして

「あ、そ、そう……ですか。 でしたら、はい」

上着を受け取るマイクロトフさん。

カミューさんは、横で可笑しそうに笑ってる。

私も笑い出しそうですよ、カミューさん

「はぁい、ではお二人とも、よい夜を☆」

「あ、は、はい! テマリ殿も、よい夜を!」

マイクロトフさんが律儀に居住まい正してピッチリ礼をしてくれた

「テマリさんも」

そう言ったカミューさんの顔が少し苦笑気味



あぁ! ……深読みされちゃったかなぁ〜♪


まぁ、これっぽっちもそういう含みがなかったわけじゃないけどね、



本当に良い夜を過ごしてくださいよ、お二人とも……



少し離れたところで立ち止まり、もう一度にぺこり頭を下げた。


ありがとう、の気持ちを込めて

マイクロトフさんが頭下げて返してくれて、カミューは笑顔で軽く片手を上げてくれた。


私はあったかい体と気持ちのまま、走り出す



☆さぁ!セイくんのとこに戻らなきゃーーー 






いなくなった邪魔者に、再び女性方の熱い視線がカミューとマイクロトフに降り注いでいた。

視線の一部にやはり婦女子の小さな奇声を聞きつけ、カミューは少し疲れた表情をする。


「どうした、カミュー?」

「……お前は幸せなやつだな」