「こ、こ、こ、ここはドコデスカ?」



目をぐるぐるさせて問いかける少女。

まだパニックを起こしている用にも見える。

だが、さっき聞いた言語ではなく、少女の言葉はセイに通じた。

「ここはハイラン洞だけど……君は何処から?」

「………………にほん。おおさか。わたしんち……ってか!!!わたし、家に居たはずなのぃーーー!!!」

やはりまだパニック状態のようだ。

言語は通じたもののわからない単語を叫びだした少女を見て、セイは思わず

「もう一枚札を使った方が良いかな……」

呟いていた。


叫んでわたわわたとなっている少女を観察していると、はたっと、その動きが止まった。

「…………」

口の中で今度はぶつぶつと呟き、頷いている。

真剣に札をもう一枚使ったほうがいいかと考えたセイに向かって、少女はいきなり、頭を下げた。


「あ。 申し遅れました。 私、。 ……です。普通のいち少女です。

助けてくれてありがとうございます」

その様子はつい先ほどまでパニックを起こしていた同じ人間の対応とは思えない。

「僕はセイ、こっちはカゲ」

彼女の後ろにいるカゲを指差すと、、と名乗った少女はびくっと後ろを振り返り

無理矢理笑顔を作るとカゲにもぺこりと頭をと下げた。


「で。普通のいち少女の君が、どうして兵隊なんかに追われて?」

セイの言葉には、今度は困惑の表情を浮かべる。

「それがその……まったくわけがわからんのです。

気が付いたらぱーってかーってぐおーって、そしてあの兵隊さんどもが!!!
 
うあ、思い出しただけでめまいがする……」


言っている意味がよくわからない。


「混乱してるって事はよく分かったよ。取り敢えず、ここは危ないから移動しようか」


「……危ないって……つか、なんで兵隊さんがいるんですか?

 ハイラン洞って国初めて聞くんやけども……」

「そりゃあ今は、戦争ちゅ……」

「うがーー!!なんもかもわからんことだらけやーーー!!!!!!」

「……みたいだね」

どうやら混乱が収まったわけではないらしい。

一生懸命普通を装おうとしているが、どうしても途中で崩れてしまう……

そんな印象だった。



「ちょ、ちょっと待ってください。 私、ちょっと整理してみます……」

「頑張って」

はちょっと戸惑った顔をし、そしてにまっとセイに笑いかけると

後ろを向いて指折り数えてぶつぶつと言い出した。。



セイは視線をに向けたまま

何時の間にか自分の背後に移動してるカゲに、少し声を潜めて言った。

「後頭部に大きな打撲があったよな。あれが原因で記憶が混乱してる、に1票」

「装っているだけやも知れません。気を許さぬよう」

「カゲは用心深過ぎるな。……さて、どうしたものか」



くるり


いきなりが振り返った。

今の会話が聞かれたわけではなさそうだ。


「うーあーーー。

すいません、ここ危ないんでしたよね? マジ、移動したほうがいいですかね?」

帰ってきた返事は混乱に混乱を重ねたうえに冷静にたどり着いたような言葉だった。

「ん?  あぁ、そうだね」

「………………よろしくお願いします。 つか、置いていかないでください」

縋るような……

そうたとえば道ばたで捨て犬が通りすがりの人に訴えかけるような瞳で

はセイとカゲを見ると、もう一度深々と頭をさげる。

「こんな場所に置いて行ったりはしないから、安心して」

セイの板に付いた営業スマイルにはぽっと頬を染めて

そしてその小さな瞳にじわっと涙を浮かべさせた。

「良かった……。 ありがとう、ほんまにありがとう(涙)」





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