「あ、やっぱりちゃんだ!!」




その声に私は勢いよく振り向く、声の主に手を振った。

「ナナミねーさん!」

私はダッシュで駆け寄り、がしっと手を握る。

「その服よく似合ってる!」

「ねーさんの手腕です!!」




そう、あれは小春日和も麗らかな、ある日のことでした。



「ナナミちゃん、お願いがあるの」

「どうしたの?」

「あのね、お洋服、作ってほしいの。 ここで着るやつ」


差し出したのは、淡い桃色の絹布。

私がこっちで稼いで買った初めてのもの。

まぁ、その話にもいろいろあったんだけど、それはまた別のお話


「いいよー」

「ごめんね? ナナミちゃん忙しいのに」

「ゼンゼン大丈夫。へーきへーき、まっかせて!」

「ナナミねーさん!!!」

その時、私がナナミちゃんに抱きついたのは、わざとではないか、という噂があったらしいけど

いいじゃん、滅多にしないじゃん、そんだけうれしかったってことにしておいてくれよ



そして昨夜、できあがったばかりの服をナナミちゃんが持ってきてくれたのです!

しかも手持ちの布と併せて、白とピンクの綺麗なグラデーションまでつけてくれて!!

本当はすぐに着たかったんだけど、夜におニューの服を卸すと

悪いことが起きるっておばあちゃんに言われてるから、今朝まで我慢したわけ






「ね、くるんって回ってみて」

「はぁい」

言われた通りくるんと回ると、スカートの裾と一緒に足下の花びらがふわふわ舞う。

「後ろも大丈夫みたいだね。着ゴコチはどう?」

「むっちゃくちゃいいです! 動きやすいし、かわいいし!!」

「良かったぁ」

ナナミちゃんも嬉しそうに笑ってくれた。

「ほんと、ありがとうね? ナナミちゃん」

「いいのいいの! 服作るの大好きだし、楽しいし!」

「うん、えへへ。 嬉しいー」


くるくるくるくるくる


ちゃん、あんまり回ると危ないよ?」

言われたとたん、くらりとした

「大丈夫?!」

ナナミちゃんが慌てて支えてくれる。

はう。 調子に乗りすぎた


「うん、大丈夫、大丈夫、あはは」


ちょっと心配そうに私を見たナナミちゃんだけど、

私が舌を出して笑うと、一緒に笑ってくれた。


桜の花びらがひらひらひら

スカートの裾もひらひらひら

風はそよそよ

小鳥の声はぴちゅぴちゅ


そしてナナミちゃんの笑顔は最高!!


この世の春ってこういうことをいうのかもしれない……
(注:用途間違ってます)

ほんわかしていた私ははっと、大事なことに気がついた

「ナナミちゃん! お礼!! 何がいい?」

「え? いいよ、別にお礼なんて」

言うと思った。

けども服一着作ってもらっておいて、なんもなしでは女がすたる


「駄目だよぅー! こんなきれいなのん作ってもらってなんも返さないわけにはいかないよう」

ちゃんがすっごくよろこんでくれてうれしいし。 それに楽しかったんだもん」

「いやいや、せめてなんか金品でなくてもお菓子とかどう?」

「ホントにいいってばー」

…………ちょっと大阪のおばちゃんぽい会話になったか……


どうしようかな、と考えあぐねていると、ナナミちゃんがあのさいこうの笑顔で

そうだ! と、手を打った。

「おかしくれるなら、それを作るときイッショに作っていい?」


……………………そうきたか!!!


ナナミちゃんは一人で厨房入室禁止令が出てる。

あのお料理の味では無理もないけど……

私は、ここに来て間もない頃、一回、ごちそうになって


三途の川を見た覚えがある……

でも、ナナミちゃん、あんなにおいしそうに作るのに、匂いも最高なのに、

なんで、あの味になるんだろふ………………

愛のエプ○ンで、アイドルが作る料理はたいてい、まずいものは見た目も匂いもすごかったりするよね。

あれで、見た目がきれいで、味がまずい時のゲストの衝撃を、

身をもって、命がけて体験したわけだけど……


そう、あの時は確か……

あんまりナナミちゃんが手際良く、上手に作るから、

つい最後の方の味見、全くしなくてまかせっきりだった。

きっと、だからだ!! うむ!

今度はちゃんと味見しつつ、ずっと見てたらあるいは……


「………………」


ちゃん?」

沈黙が長かったせいだろう、ナナミちゃんが不思議そうに覗き込んできた。

「……あ、ごめん」


私は、決心して、こくりとうなずく。

「うん、いいよ!一緒に作ろう!」

「ホント?! やったー!!」

ナナミちゃんがほんとに嬉しそうな笑顔で、私の手をぎゅっと握ってくれた。

あぁ!!神様ありがとう!!


照れくさいのと感動と興奮で、空を見上げると



真っ青な空に、優しいピンクの桜が目に飛び込んだ。

「きれー。 見て、ナナミちゃん!」

「わぁ……ほんとう。桜だー」

「なんていう桜だろうねー」

「え、桜って桜でしょ?」

「でもちょっと形、違うくない?」

「そうかなぁ??」

「でもきれいね」

「うん。 この服と同じ色だね」

「うん!」


春は爛漫 乙女二人はちょぴっと桜見物をしてから、

おやつを食べにお城に戻りましたとさ☆








でも、このお話、実は後日段があったりするんだわ。


後日段へ