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それはシーナにおやすみなさいを言った直後だった。 「あ。シーナくんにクリスマスプレゼント渡すの忘れてた……」 楽しく喋りながら歩いているうちに の頭の中からぽーんと、用意していたプレゼントの事がすっ飛んでいたのだ。 「プレゼント? 用意してたんだ」 「うん」 はこくりと頷き、そして少し考えてから言った。 「後で部屋に持っていく」 「明日で良いんじゃない」 「そう? うんじゃあ、明日朝のうちに持っていこう」 セイに言われるとあっさりである。 ふと、石窓の向こうで降りしきる雪が目に入った。 「積もるかなぁ……」 「どうかな。 この辺りじゃ、あまり積もる事はないみたいだけど」 「そっか……」 少し寂しそうに言った、あと、すぐに気を取り直したように笑う。 「……積もったらね、雪うさぎ、作ってあげる! 雪だるまも」 「……雪ウサギって、何?」 「えっとね、雪を固めてね、うさぎの形にするの。 それで、赤い南天の実とはっぱを耳にして……可愛いよ」 トランに雪は滅多に降らない。 降ってもまず積もらない。 雪だるまも知識のみだ。 「……凄いね。、そんなものが作れるんだ……」 「そんなにすごくないよ。 作り方教えてあげるから一緒に作ろう?」 セイの感心の仕様には少し照れつつ言った。 よもやセイが雪でできたリアルな彫刻のウサギを想像しているなどと思いもしない。 「いや、凄いよ。自慢してもいいと思う」 かなり真剣な顔で言った後、自分の両手まじまじと見て 「……僕に作れるかな」 「作れるよ! 大丈夫!」 信じて!というように、自分の胸をどんっと叩く。 彼女はこういうとき、いつも自信たっぷりだ。 根拠はどこにもない。 「うん……分った。頑張ってみる」 セイは真剣な顔のまま拳固めて頷いた。 そんなセイににこっと笑うと、はまた窓の外に目をやる。 「積もるといいなぁ……」 「そうだね……僕も、見てみたいな。 雪の積もるところ」 セイも同じように窓の外を見る。 「……うん」 の返事は雪の中に消えていくほど、小さいものだった。 まるで雪に魅入られてるかのように…… セイも黙ったまま、静かに降る雪を見る。 静かに 黒い空間を白い雪が浮かんでは消え、浮かんでは消えしていった。 「あ、そうだ」 ふいにが慌て気味に声をあげた。 「え?」 その声に、視線を雪から離し、の方を見る。 「あ、あ、あのね? あの、セイくんにもあるの。クリスマスプレゼント」 の頬が仄かに赤く染まった。 「僕にも?」 きょとんとした顔で答えるセイは、それに気が付いていない。 「うん。 ちょ、ちょっとだけ待っててね!?」 こくこくっと頷くと、急いで、自分の部屋に入っていった。 再び、セイは窓の外に視線を戻した。 その場から動かず、ただ窓の外の雪を見ている。 はそれほどの時間も掛からず、すぐに部屋から出てきた。 手には小さな包みと、それと別に何か持っている。 「みんなにあげるぶんと別にしてたんだ」 その声にセイはに向き直った。 はそのままてってってとセイの真ん前に立つと 「えと、ちょっと失礼します」 成すがまま大人しく見ていると、 不器用ながらも一生懸命にバッチのようなものを付けているようだ。 「うん?」 胸元ぐらいに、プラスチッククリアガラスの星の形をしたものがぶら下がっていた。 「これは……?」 「あのね、クリスマスの樅の木に付ける飾りをピンバッチにしてみました。 お星様の。 戦う時とかには邪魔になるかもだけど……えっと、あげたかったの。 それ……」 何が恥ずかしいのか、とても照れくさそうに微笑む。 「へぇ……綺麗だね。宝石みたいなのに、軽い」 セイは物珍しそうにピンバッチを少し眺めると、またの方に視線を戻した。 「有難う、大切にするよ」 嬉しそうに笑う。 その顔を見ても嬉しそうに笑い返した。 それはどこかほっとしたように……。 「良かった、喜んでもらえて」 「クリスマスのプレゼントを、この年になってもらえるとは思わなかったな。 しかも、サンタクロース以外から……」 笑っているセイの言葉の最後の方が小さく消えていく。 は少しだけ首を傾げると、すぐに笑顔で言った。 「サンタクロースはいくつになってもくるんだよ」 「の世界では、そうなんだ?」 笑うセイに、は大きく頷いた。 「うん。 信じてたらね、来てくれるの」 そして、少しだけ息を吸って…… 「クリスマスはね『愛が降る日』だから。 サンタさんはいつでもどこにでもいるの。 で、幸せとプレゼントをくれるの」 「そっか……幸せな、日なんだね」 胸についたピンバッチに視線落しつつ、目を閉じる。 薄っすら微笑んでるように見えるが、言葉からは感情が読みとれない。 きっと いろいろあるんだろうな…… は思う。 だから精一杯の笑顔で言うのだ。 「だからねー。 私はクリスマスはいつだって誰かのサンタになりたいんだ」 すっと……が動いた。肩にかかった髪が少し滑り傾く 気配に、セイが目を開ける の伺うような顔がそこにあった。 ゆっくり微笑んで 「誰かの、サンタ?」 聞き返す。 「うん」 一瞬だけ真剣な顔しては頷いた。 そしてすぐにまたえへらっと笑う。 「サンタさんはね、忙しいから、全員のところ回れないでしょ? だから、私が誰かの……大事な人たちのサンタさんになりたいの。 まぁ……プレゼントあげるだけだけど」 そして少しだけくしゃっと笑顔を崩して言った。 「プレゼントと一緒に幸せも送れたら素敵……」 セイは微笑んだまま 「大丈夫だよ」 そう言ってから、の頭をぽんぽんと少しだけ撫でる 「がサンタクロースなら、幸せだって……ちゃんとあげられる」 にこっと笑いかけた 「僕は、ちゃんともらったから」 はその笑みに、崩れた笑みを元に戻して微笑んだ。 「ほんと?……だったら良かった……。 セイくんもサンタさんだね」 のその言葉に少しだけ驚いた顔をする。 「僕も? ……プレゼント、誰にもあげてないよ」 「ううん、今貰ったよ。 ……私も幸せになれました」 と照れくさそうに舌を出すに セイは驚いた顔から、嬉しそうに笑った 「……じゃあ、プレゼントだけはまた後日って事で。勘弁してもらおうかな」 が慌てて手を振りながら笑った。 「あ、うわ、プレゼント催促したんじゃないよー」 「あはは、分ってるよ。でも、何が欲しいか考えておいて。ね?」 「うん、ありがとうー」 はもう一度はにかむように笑うと、手に持ったまま忘れていた包みを差し出した。 「あとこれはクッキーなの。 作ったやつだからお口にあうか、だけど」 包みには薄い水色のリボンがかけられ、樅の木の飾りがついてる。 梱包もお手製に間違いないらしく、少し歪んでいるところがらしい。 だが、セイにとっては包み方なんて関係ない。 「有難う。大事に食べるよ」 笑って受け取ってくれたセイに、は幸せそうに笑い返した。 「……えへへ。 じゃあおやすみなさい?」 さっきと反対の方向へ小首を傾しげる。 また肩で髪が揺れた。 「うん、おやすみ。 風邪、ひかないようにね」 「はい。 ……メリークリスマス、セイくん」 は自分の部屋のドアのノブを回し、扉を開けてからもう一度振り返った。 そして、まだその場で見送ってくれているセイに微笑んで軽く手を振る。 軽く片手上げて返されるのを見ると、は部屋の中へ入っていった。 扉を閉める。 外からセイが立ち去る気配がした。 は思わず、まだ少し赤いであろう、その頬をぺちっと叩く。 「良かった、渡せた……」 今夜、一番渡せるか心配だったセイへのプレゼント たくさんのありがとうを、彼は気づいてくれたかしら? と だが 良いのだ。 気が付いていても、気が付いていなくても 笑ってくれたから は一人、えへっと笑うと、ベットにぽむっと座り込んだ。 持っていたリュックを降ろしごそごそ荷物を整理する。 「ケイには明日、ストロベリースパークリングワイン持っていかなきゃ。 そんで一緒に飲もう♪ あー……せっかくのプレゼント、あと、何人かあげれてないな……明日、捕まえなきゃ」 ☆さてと、寝ましょうかね ☆あ、そうだ! もう一人、忘れてたよ!……部屋にならいるかな? |