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うーん……あいつ、絶対来てないだろうな…… 賑やかな外のお祭りを抜けて、そっと人の少ない城内へ入る。 ここに来るまでに二枚の皿に、料理を確保済みだ。 いつも走り回っている城の中が妙に静かだ。 人っ子1人居ない…… 当然、少数の見回りを残してほとんど外に出払っているのだろう。 人気がないので、いつもは灯る明かりまで、数が少ない。 ミニスカートの素足に肌寒さを感じる。 「どこかなぁ……」 寂しさを紛らわすように、一人ごちた。 そしてはたと…… 「きっとあそこだな」 うんと頷き、は目的の人物が一番居るであろう場所へ足を運んだ。 ひたたたたたたた 静かな廊下に足音が響く。 思った通り、奴は劇場に居た。 その端の窓際。 壁に凭れて窓から、遠い賑やかで明るい外を見ていた。 足音に振り返る。 「クライブーー!」 嬉々として近づくの姿が視線に入ると、溜息ついて視線を反らした。 あからさまだが、慣れっこなのでは気にしない。 「ごちうそう持ってきたよー。 一緒に食べよう?」 「いらん」 差し出された皿を一瞥しただけで短く切って返したクライブにがぷうと頬を膨らます。 「またそんな事言ってー。 食べないともったいないよ」 「なら、お前が全部食べれば良いだろう」 「むちゃを言うな! 私をこれ以上太らせる気か!」 「知るか。兎に角、俺はいらん!」 微妙に語尾の最後が強まる。 再び、のほっぺがぷうっと膨れた。 そして有無を言わさず、クライブの覗いていた窓の石棚の部分にその皿をぽんと置く。 自分のぶんだけ手に持つと 「いただきますー!」 もしゃもしゃ食べ始めた。 そう。 食べたかったが両手で皿を持っては食べれないのだ。 そんな事は考えもしてないだろう、クライブは慌てて置かれた皿が落ちないように手を出して押さえる。 そんなクライブの様子に、がにこっと笑った。 反対にクライブの眉が少し寄る。 クライブにはがわからなかった。 何かあると寄って来てはまとわりつき、引っ張り回し どんなに邪険にしてもあまり気にしない目の前の娘が。 ふいにがクライブを見上げるようにして言った。 「クライブはクリスマスきらい?」 「…………好きでも、嫌いでも……ない」 その言葉にの表情が不思議なふうに変わる。 「私はねぇ、好き。 私の世界にもあるんだよ。 こことは違うお祭りだけど」 「……在っても無くても。好きでも嫌いでも、俺には関係の無い事だ」 「そっかな? クリスマスってみんなに『愛の降る日』だから、きっとクライブにも降ってるよ」 小さく微笑んだ。 「気が付いてないだけで」 「愛か…………そんなものは、尚の事俺には関係のないものだ」 「関係なくないよ!」 の声が大きくなる。 「私はクライブに愛、あるよ!?」 思わず驚いて目を丸くして彼女を見た。 真剣な瞳で自分を睨み付けている顔はそこにあった。 言葉を無くし黙っていると その顔が、急に真っ赤になってきた。 そしてぷはっと息を吐くのと同時に 「あ……あ!! その!! 愛って愛だけど、愛っていってもいろいろあって!!!」 どうやら自分の言った言葉に意味に気が付いたらしい。 皿を持った手をばたばたとさせて慌てながら うまく言葉言おうとしているその様子を少し眺めて クライブは、皿を押さえていない空いた方の手をゆっくり口元に持ってきて肩で笑う。 「お前が言ったんだろう」 の口がはうはうと動き、暫くしてからやっと言葉が吐き出た。 「……笑ったぁ……」 そして拗ねたようにクライブを見上げる。 「だって、でも……うん、言ったよ! 嘘じゃないもん」 その顔は真っ赤だ。 クライブの目がさっきよりも可笑しそうに細まる。 「なら、自分の言った言葉で慌てるな。 可笑しな奴だな」 「あうっ」 その通り。 はうっとなってから胸に手を当てて大きく深呼吸をした。 「えとえと……そう、愛はあるの」 そして、うむっと自分にも言うように頷き、 「あの、恋愛かどうかはわかんないけど、好きだもん。 それに愛って恋愛だけじゃないよね?」 まだ少し不安定な気持ちを表すかのように語尾が疑問系になっていた。 クライブの目が…ふっといつもの冷たい色を取り戻す。 口元に当てていた手を下ろし……安定してた皿からも手を離し…… また壁に凭れて腕組み、外の方に視線をやる。 「……さぁ、な。 俺には、どれも……ないからな」 一呼吸置き 「知らない」 そう答える。 他に答えようがない。 「ないんじゃないと思うけどなぁ……。ともかくね!!」 呟いたがいきなり、詰め寄ってきた。 驚いての方見る。 「クライブに今なかったら、私がクライブにあげるの!」 顔は赤いが表情はさっきのように真剣だ。 暫くの沈黙と睨み合いの末、先に言葉を発したのはクライブだった。 「………………愛、を?」 の言った言葉をそのまま、聞き返す。 驚きと困惑、が交じっていた。 「う……うん! 愛を! その……だって……」 の表情がまた変わった。 今度は恥ずかしそうに、照れくさそうに……。 「大事な仲間……だと思ってるもん。 助けて貰ったもん……。 大事なもの、いっぱいくれたもん……」 泣きだしそうにも思える声だった。 でも……そうの言葉はクライブには伝わらないだろう。 あまりにも直球すぎて。 それはあまりにも聞き慣れない言葉すぎて。 クライブは……笑う様な感じで息を吐いた。 「お前を、助けた覚えも何かをやった覚えも、俺にはない。 だから、やるなら他の奴にやれ。 その方が、有益だ」 少しだけの眉がぴくっと吊り上がる。 「やだ。 有益とか無益で愛があるんじゃないもん! いいじゃんさ! クライブに覚えなくても私にはあるもんね」 べーっと舌を出して笑った。 それには何も言わずに壁に凭れなおす。眉間に皺寄せ、溜息つき から視線を逸らした。 すると、もクライブに負けない溜め息つき いきなりぺたんっと、その場に座り込んだ。。 がくっと崩れたようなに視線を戻す。 「…………何をしてるんだ」 彼女の突拍子もない行動にまた少し驚く。 は脱力したように、はぁ……と、息をついてから言った。 「……軽く腰が、というか力が抜けた。 なんかめっちゃ恥ずかしい事をいっぱい言った気がする…………。 ちべたい……」 言葉になまりが出ていた。 彼女の国のものだという言葉だ。 「……冷えるぞ」 「……わかってるけど、動けへんのんや……」 また頬赤くしてちらりと見上げる。 照れくさいのを隠しきれず失敗している様子がなんとも…… 大きくため息ついて、腕でも掴んで引っ張り起こす。 「ごめん……」 は小さく謝った。 それからがっと目を見開き、ふいにポケットをごそごそとする。 何をしているのかと思う間もなく、 「これ!」 いきなりぐいっとポケットかか出した手を突きだしてきた。 「…………何だ?」 自分の手を見るクライブの手を強引に掴むと、その手の中に冷たい物を握らせてきた。 「……プレゼント。 クリスマスの」 掌には小さな銅貨が一枚入っている。 クライブは、何?とでも言いたげに眺めると 「……俺は子どもじゃないぞ」 と、に視線を戻した。 はクライブの視線から逃げるように視線を逸らし、その手をゆっくりと離してから、 クライブを握ってた方の手を後ろに隠して、一歩後ろに下がる。 「子供だけが貰うもんじゃないんよ。 私んとこでは」 そしてまたまっすぐな瞳でクライブを見つめ返す。 「あげたいからあげるの。 だからもらっとけ」 もう一度コインを見る。 は補うように続けた。 「……それこっちの国では使えないコインだけど……お守りになるんよ。 ばーちゃんから聞いてん……だから……持っててやってくれ」 「なら、お前が持っていた方が良いんじゃないのか」 それを返そうと手を差し出したその途端 「おばか! 私はもう持ってるやい!!! 人が照れくさいのがんばって渡してるんだからおとなしく受け取れーー!!」 「…………分った……」 完全に勢いに飲まれてしまった……。 はその返事にほっと肩を降ろすと小さな声で言った。 「うん。 ありがとう……」 そして照れ隠しのようにえへって笑って 「えっと、私、そろそろ戻るね……」 「あぁ……」 クライブはまださっきの驚きの余韻が残っているのか、返事にどこか気が入っていない。 いつものことだから、いっか…… は空になった自分の皿持つと、 ふらふらっと、傍から離れた。 そして思い出したように首だけ振り返り 「それ、ちゃんと食べるんだぞーー!」 と、声をかける。 クライブはコインに視線を落としてた。 は再び歩き出し、やがて劇場の入り口でもう一度振り返る。 「愛してるぞーーー!!」 そう叫ぶと勢いよく走り出した。 「うははははははははははははははははは」 こういう時って笑うしかなくない? と、恥ずかしい言葉を連発してしまったは自分に言い訳をしつつ、その場を離れて行った。 ☆ちょっと散歩がてらぐるってしてからお祭の中へ行くぞー ☆あんま人目につかないように……戻ろう…… の最後の大声で、クライブは顔上げて立ち去っていく姿を茫然と見送った。 辺りに静寂が戻る。 クライブは、ぷっと可笑しそうに噴出した。 「……可笑しな女だな」 |