人気のあまりない静かな場所に出た。



「こっちのほうは静かだなぁ……」

涼みがてら、ふらふら歩いていると、青いマントが目の端に入ってきた。



「あれ? なんでこんなとこに……」



あんな青いマントを付けている人物はの知る限り、この城ではたった一人だ。

様子を伺い、隠れるような彼の後ろに、そっと忍び寄った。

「フリーックさん♪」

「うわっ!!」

「おわぁ!!!」

あまりのフリックの驚きように、

驚かせたのほうが(本人そのつもりなし)大きな声を上げた。


「な……なんだ、か……」

「な、な、な、んだかじゃないっすよ! あーびっくりした。私の顔はそんなに衝撃ですか?」

「い、いや、違う。すまん」

むしろフリックはの驚き様に驚いた様子なのだが。



深く溜息をついて

「そうじゃなくて……」


と、少し辺りを見回す。

その様子にピンときた。


「…………ニナちゃん?」

「……ハハ」

尋ねると乾いた笑いを漏らす。 図星だったらしい。 目が死んでいる。

これはそうとう……追いかけられたのだろう。


「ニナちゃんは見なかったですよ」

少なくとも私が通ってきた道では、と笑って付け足してはおいた。

ニナは神出鬼没だし、フリックセンサーが付いている (と、は思っている) ので

例え、さっき会わなかったからといっていつフリックを見つけだすかわからない。


「そうか……」

深く溜息付いてから気を取り直したように言う。

「それにしても、はどうしてこんな所に?」

「うんと、クライブに会いに行ってたんですよ。 あの人ぜってー出てこないって思ったから」

「あいつが祭りに参加する方が驚くよ、俺は」

「あはは、そうかも」

フリックが笑うともつられて笑った。 

「何してたんだ、あいつ?」

「うんー……なんかいつもの場所で外見てたみたい?」

の視線が泳ぎだし、少し頬が赤くなる。

だからといって、この朴念仁がそれに気が付くわけもなく

「そうか」

少し笑ってから

「……で、他には。 誰かと会ったか?」

どうやら本題に入ったらしい。

フリック本人は自然に聞いたつもりだろうが


「……誰かって、例えばケイとか?」

図星を指されて明らかに、ぎくーーっとする。 

「え、いや、俺は、別に……誰とは言ってないだろ、誰とは!」

ムキになるフリックを見てはにやにやと小悪魔の笑みを浮かべて見せた。


「えー。 じゃあ違うんですかぁ? 他にねぇ〜誰と会った〜かなぁ〜♪」


うっと、一瞬詰まったあと

「…………お前、セイに似てきたんじゃないか……」

ガックリ肩を落す。

「そんなおそれおおい! 私なんてまだまだですようー」

大笑いしたにフリックの

「あんな奴、1人で充分だ……」

という小さな呟きは聞こえていない。

ひとしきり笑うと、まだ目に悪戯いっぱいの光を浮かべて、こほんと咳払いをした。

「で、ケイちゃんですが……」


その言葉にフリックがばっと顔を上げる。


大変わかりやすい。 だからにとってもフリックは手頃なからかい相手になるのだ。


合掌


「……残念ながらまだ会ってないです」

ぷぷっと笑いを堪えて、フリックに言った。 が、とりあえずまじめなフォローだけは入れてみる。

「でもケイってば今日の企画者だし、あの人混みの中で遊んでるんじゃないでしょうかね?」

フリックは少し肩落してから、苦笑いし

「まぁ、間違いなくそうだろうな。羽目を外し過ぎてなきゃ良いが……」

溜息。

幸せがどんどん逃げていくことに本人は全然気づいていない。


苦労の耐えない人だなぁ……


さすがのも少し同情を覚えた。

「……えと……心配なら探しに行けばどうです?」

「そうしたいのは、山々なんだがなぁ……」

再び溜息。また幸せが遠くなった。

「………………ニナちゃん?」

深い溜息……。

「大変ですねぇ。 乙女のパワーはすごいからがんばってください」

「他人事だと思って……」

「他人事ですってば。 あ、でも……」

笑いながらはリュックの袋を開けた。

「ガンバるフリックさんにクリスマスプレゼントー」


「へ?」

ひょいっと出された小さな袋に、驚いた顔のフリック。

それを見てがくすくすと笑う。

「はい。 力のつく、魔法のつまみです、カシューナッツとかいろいろ入ってます」

「魔法の……ねぇ」

苦笑いしながら、受け取った。

「気は心……」

「何か言ったか?」

「いえいえ、なんにも♪

ちなみにバナナの乾燥砂糖漬けは手作りです☆よく味わって食ってくださいね」

「へぇ、手作りか……サンキュー。よく味わって食うよ」

と笑って、袋を軽く掲げてみせた。



そういう仕草は二枚目でかっこいいのになんでかなぁ……



もちろん、口には出さず、変わりにっこり笑ってリュックを背負った。

「じゃ、私、そろそろ行きます」

「あ、いや。ちょっと待ってくれ」

「はい?」

行こうとしたを呼び止める。 は首をかしげてフリックを見た。

「すまんが……なんかこのままだと、会える気が一切しないんで……」

その表情はどこか暗い……ハハと自嘲気味に笑うと申し訳なさそうに言った。

「もしケイに会ったら……祭りが終わったら部屋に行くから、起きて待ってくれって。 伝えてくれないか?」

「うわぁ……」

珍しく思いっきり苦笑する。


フリックにはもうそれしかないのだろう。 

もちろんその伝言にでなく、そういう伝言を頼まなければならないフリックの不幸に対してだ。


「了解しました。うまく会えれば伝えておきます……」

「あぁ、有難う」

安心したのか、嬉しそうに笑うフリックに、の悪戯心がうずうずと疼きだした。

「それじゃあ、またです☆」

「またな」

手を振って行きかけてから、立ち止まり


「……ちなみにケイちゃんには後でいちご酒なんかお届けしたりしまーす♪」

言うなり、ダッシュで駆けだした!


「え……おい! 待て!!!!」

慌てて叫ぶが後の祭りである。

普段には見られない早さではたったかと走っていった。

追いかけようとしたその時、

「あ、フリックさんみつけたー!」


どうやらさっきの声が……聞こえたらしい。

フリックは再びニナから逃げ出した。




一方



「フリックさんってやっぱ、面白いなぁ(えへ)」


もちろん、からかっただけだったりする。

いちご酒に関しては本当に用意をしているが、フリックが部屋に来るとわかっていてそれを持って行くほど、も野暮ではない。

……無事に二人の夜が過ごせるかどうかはともかくとして





☆そろそろ戻った方がいいかな?


☆あーとりあえず水ー水が飲みたいー